1989年3月、所長の秋山が当時勤務していたノートルダム清心学園清心女子高等学校の生物教室にカスミサンショウウオ(現在のセトウチサンショウウオ)の卵嚢が持ち込まれました。その卵を生物部の活動として産卵する成体まで飼育して以降、秋山は有尾類の研究を34年間生徒と共に続けてきました。有尾類研究の教育実践は2006年度からの文部科学省スーパーサイエンスハイスクール事業(SSH)の取り組みで評価され、広く知られることとなりました。
今回の山脇有尾類研究所の開設は、ノートルダム清心学園清心女子高等学校におけるSSHでの取り組みをさらに発展させて、生徒のために、有尾類研究を中心に据えた本格的な科学研究のためのオープン・ラボを提供するという新たな試みです。
両生類は大きく分けて無尾類、有尾類、無足類の3種類に分類されます。有尾類はサンショウウオやイモリのように、四肢があり、変態後も尾が消失しないで一生残り続ける仲間を指します。
日本に生息する有尾類は、オオサンショウウオ科(1種)、サンショウウオ科(45種)、イモリ科(5種)の3科で、サンショウウオ科は、 キタサンショウウオ属・サンショウウオ属・ハコネサンショウウオ属に分かれています。サンショウウオ属とハコネサンショウウオ属は、国外にはまったく分布していない日本固有種です。近年、種区分が再検討されていて、種類が増加しています。
イモリやアカハラの名で、昔から最も馴染みのある有尾類。体色は、背面が黒色または暗褐色、腹面は赤色で、不規則な形状の模様があります。体内受精。本州、四国、九州とその周囲の島嶼に分布しています。主に水田、池、川の淀みなど流れのない淡水中にいて、繁殖期以外は水辺の近くの林や、草地の水気の多い枯れ草の下などで生活しています。準絶滅危惧(NT)(環境省レッドリスト)。
Akiyama.S, Iwao.Y., Miura.I (2011) Evidence for True Fall-mating in Japanese Newts Cynops Pyrrhogaster.Zoological Science 28:758-763.
アカハライモリよりやや大型。体色は黒色から暗褐色で、背中に赤褐色やオレンジ色の帯や斑紋模様があります。奄美島、沖縄諸島に分布しています。形態や分子系統解析から奄美諸島の個体群を基亜種アマミシリケンイモリと、沖縄諸島の個体群を亜種オキナワシリケンイモリに分けられました。準絶滅危惧(NT)(環境省レッドリスト)。
大久保亜美、中島万葉、秋山繁治(2023)イモリ属の繁殖戦略〈南西諸島のシリケンイモリに着目して〉.日本動物学会第94回大会高校生による研究発表
イモリ科の中で最大の種。天敵に襲われたときに皮膚からあばら骨の尖端を毒針のように突き出して、身を守る習性があります。ヨーロッパでペット用に飼育されていて、一年中繁殖が可能で大量飼育が可能なので、新たなモデル生物として採用されました。
体色は淡灰褐色~暗褐色で、全体的に青白色の細かい点が密に分布しています。体外受精。関東地方(群馬県を除く)、福島県相馬地方に分布しています。絶滅危惧II類(VU)(環境省レッドリスト)、絶滅危惧IB類(あきる野市版レッドリスト)、日の出町指定天然記念物。
体色は淡い黄褐色または濃い緑がかった褐色。体外受精。大分県を中心に九州の限られた地域に分布しています。四国の一部にも分布するとされていましたが、2018年に土佐清水市の個体群をトサシミズサンショウウオとして新種記載されました。低山地や丘陵地の林内の止水域の周辺部で生活しています。絶滅危惧II類(VU)(環境省レッドリスト)、大分県指定天然記念物(大分県城山のオオイタサンショウウオ)、大分市指定天然記念物。